令和3年3月度 茨城放送番組審議会議事録概要

番組審議会議事録概要

令和3年3月度 茨城放送番組審議会議事録概要

開催日時
令和3年3月24日(水)
AM10:34~AM11:32
開催場所
茨城放送本社3階会議室
委員の出席 [*印 委員長 ・印 副委員長]
  • 渋 谷 照 夫 [ * ]
  • 小 西 俊 一 [ ・ ]
  • 鎌 田 賢
  • 川 股 圭 之
  • 柴 田 敦
  • 蛭 牟 田 繁

茨城放送出席者

  • 取締役会長

    北 島 重 司

  • 代表取締役社長

    阿 部 重 典

  • 編成事業部サブリーダー

    宮 田 浩 二

  • 報道広報事業部サブリーダー

    畑 中 一 也

議題
「聞き出す力は伝える力に比例する
~震災10年「ぴーぷる」コラボスペシャル~」
令和3年2月28日(日)15:00~15:30放送

委員からの意見

委員

 月日の経過とともに被災体験や記憶が薄れていくということは当然否定できないが、その風化を克服するということは大きな課題だと思う。
 今回、難病患者のための防災ガイドブックを作成した難病カフェの代表、地元茨城の生活者のために目を向けて撮影活動するフォトジャーナリスト、鎮魂の願いを込めてボランティア活動してきた市民グループ三組と、それを取材した朝日新聞記者3人のインタビューで構成された番組で、震災後の日常にそれぞれの立場で向き合う人の心情を聴くことができた貴重なものだと思った。朝日新聞の紙面と連携した企画で、震災報道の継続というものには、やはり被災者や関係者との信頼関係の構築が欠かせないと思う。その信頼関係ができているからこその番組であると大変評価する。
 番組は記者力といったものにフォーカスを当てるといった趣旨だと理解している。震災後に取り組んでる市民と記者のインタビューで、双方の扱いにもう少しメリハリあった方が良かったのでは。やはり取材者は、あくまで取材して伝える立場、市民の方に重きを置くような扱いもひとつのやり方だったのではないか。
 二人目のフォトジャーナリストの方、放送の中で活動の具体的な説明が足りなかったせいか、震災との関連性がやや低いのではないかと感じた。インタビューした記者も最後の段落を何でどう締めるのかものすごく悩んだという発言があった。「ぴーぷる」という記事を読まずに放送を聴いた聴取者には理解するのが難しかったのではないか。
 いわゆるカレンダージャーナリズムという言葉がある。新たな話題の発掘や検証を行わず、毎年その時期だけ表面的なものを報道するという意味でマスコミを揶揄するニュアンスが含まれている。しかし、こういうカレンダージャーナリズムというのは否定されるものではないと考える。東日本大震災以降も大規模な災害続いている。こういったものを伝え続けなければ、風化はさらに進んでしまう。復興の過程を記録したり、被災者の思いを伝え、防災の啓発に資するような番組づくり、このような番組に引き続き力を注いでいただければと思う。

委員

 今回は、「聞き出す力は伝える力に比例する~震災10年『ぴーぷる』コラボスペシャル~」という番組。茨城放送では、平成23年の東日本大震災以降、同震災に関連した様々な番組を制作し、「防災ステーション宣言」のスローガンのもとに情報発信や啓蒙活動に取り組んできた。今回の番組は朝日新聞水戸総局とのコラボレーション企画でこれまでの活動の一環かと思う。
 朝日新聞茨城県版の人物インタビュー「ぴーぷる」で取り上げられた取材対象者に茨城放送が改めて取材し、あわせて同人物の取材を担当した朝日新聞記者からのコメントを紹介する内容。この番組が、「ぴーぶる」で取り上げられた取材対象者に対するインタビューだけで構成されていたら、新聞記事の二番煎じとなり、面白みに欠ける内容だったと思う。この番組は、実際に当時の取材を担当した新聞記者にもスポットをあて、取材のきっかけや記事で伝えたかった思いを聞くことで、取材対象者の活動や思いがより深く伝わった。特に、柴田さんを取材された大谷記者の話は、新聞記者の「伝えたい」という思いや実際の記事がどれだけ伝えられたのかという葛藤が伝わってきた。
 今回の番組は、朝日新聞水戸総局とのコラボレーション企画とのことであり、これまでにない番組だったと思う。とりあげた取材対象者やテーマも、テレビやネットではあまり見ることのない物だったと思う。茨城放送では、今後も様々な視点から震災を取り上げ、情報発信と啓蒙活動とに取り組んでほしい。

委員

 同じような災害が県内で起きたら何ができるか、どう備えておくかという防災ステーションの大きなテーマの中で、自分を、大切な人を、関わる人々を守るための普段の行動の参考になる事例を提供する番組だった。朝日新聞茨城県版「ぴーぷる」の記事に取り上げられた人物・活動から選ばれた3つの事例は、それにふさわしい価値をもち、興味深い内容を示していた。
 番組の構成は、防災キャスターの樋口さんがインタビューで取材対象人物から活動に関わる言葉を聞き出し、記事の執筆記者へのインタビューを加えて、記者の意図、聞きどころ、読みどころの解説を聞き出すことにより重厚になっていた。3つの事例は、自ら難病をかかえつつ難病患者のための防災ガイドブックを発行した桑野さん、フラットな目線で茨城にある多様な暮らしに注目して人々の等身大の暮らしを写真で切り取る写真家の柴田さん、東日本大震災の犠牲者の鎮魂の紙袋ランタンを灯す活動に多くの人々を巻き込むことによって災害記憶の風化を防ぐ主婦グループのゆめまっぷさん、いずれも感心させられる内容だった。
 構成が重厚なために、リスナーがとるべき観点が多重になっていると感じた。引き込まれるのが少し難しいと感じた。新聞記者のように報道価値を見出し・聞き出して伝えられたらいいなと思う自分なのか、取材対象の人物のように何か活動ができたらいいなと思う自分なのか、番組を聞く途中で自分の観点を切り替えなければならないと勝手に思い込み、少し苦しく感じた。
 番組の最後で、それぞれの取材対象者から聞き出したメッセージをまとめて聞いたことで、私の理解もまとまった。

委員

 「聞き出す力は伝える力に比例する」。まさにラジオだけじゃなくて、新聞、テレビの取材にはつきもの。「聞き出す力」は命だと思う。リスナーの人たちがそれを聞きたかった、教えてもらいたい部分について、記者の「聞き出す力」がどのくらいあるかにより伝わる。これはQ&Aで大事なところ。
 今回の番組は、朝日新聞の水戸総局と茨城放送のコラボレーション。この震災の10年というのを見つめ直すということで、深掘りしたいい番組だったと思った。内容では聞き出す力の大ベテランの樋口直実さんが10年間ずっと続けてこられた蓄積を元に、朝日新聞茨城県版の人物インタビュー「ぴーぷる」で取り上げられた取材対象者を紹介し、樋口さんが取材記者の感想を聞き出し、さらに取材対象者の話も聞き出すという二重、三重の構造でリスナーの状況を深く伝える工夫をした内容だった。

委員

 全体を通じて興味深かった点は「朝日新聞茨城県版「ぴーぷる」との連携番組であること」、「取材を担当された朝日新聞の記者の記事以外の言葉」だと感じた。検索を通じ、難病カフェ、フォトジャーナリスト、ゆめまっぷなど各団体の活動や取り組みなどを知り、番組との相乗効果で改めて理解、感銘した。
 もっとも印象深かったのは柴田大輔さんを取材した水戸総局の大谷百合絵記者のインタビュー。「いろんな色の粒が混じったトウモロコシ」の世界観を通じ、周囲との壁のない感性、誰もが居場所がないことはないなど、取材から「文脈に込めた記者自身の共感」を説明した流れに、取材への思いが伝わってきた。
 新聞とラジオの連携番組の効果のひとつとして、新聞紙面を通じじっくりと理解した事案に対し、取材を通じた思いや感情をこのような番組を通じて聴くことで、伝える可能性は大きいと感じた。
 一方で、「ぴーぷる」が広く周知されている前提で番組は進んでいたが、「ぴーぷる」そのものの概説があっても良かったのでは。また、著作権などの問題はあると思うが、放送日前後期間だけでも茨城放送のHPなどで「ぴーぷる」自体を掲載していれば理解力が高まったようにも感じた。

委員

 今回の番組を聴いて、改めて市井で努力している方がいてこそ、新聞記者として記事ができるのだと確認した。タイトルは「聞き出す力は伝える力に比例する~震災10年「ぴーぷる」コラボスペシャル~」で、記者に焦点をあてている。相手の言葉を引き出す力とか取材のやり取りの中で取材対象者の考え、気持ちがまとまっていくというのは勿論あるけれど、地域で頑張ってる方そのものがいなければ記事は成り立たない。今回登場した二人と1グループの方々は、地に足がついた活動をしていて、まさに取り上げるに値する。こういう方々が地域を支えているのだと実感した。
 ひとつ取り上げるならば、取手支局長佐藤清孝記者がゆめまっぷの方々を取材してコメントした「気負いがないのがいい」という表現が全てだと思う。
 一方、今回の番組については、記者の力不足というか、畑中さんと樋口さんは相当苦労をしたのではと思った。震災10年に寄せた番組だが、やはり柴田さんのパートでは震災に関する話がやはり薄く、記者1年目ということで興奮した、感動した話が中心になった。リスナーにとっては震災10年のところが薄くなったので、聞きにくかったのではと感じた。
 そのような中、番組の最後に3人の震災に対する思いを改めてインタビューして放送した。また、樋口さんが番組中、番組の趣旨を繰り返しリスナーに伝えていた。報道は記者と取材された人々で作るものであるという言葉をはさむなど、番組をしっかりとした方向に持って行ってくれたことに感謝します。

2021年04月30日

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