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番組審議会議事録概要
令和2年4月度 茨城放送番組審議会議事録概要
- 開催日時
- 令和2年4月30日(木)
- 開催場所
- 新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から 今回は集合せず、事前レポートの提出により開催
- 委員の出席 [*印 委員長 ・印 副委員長]
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- 渋 谷 照 夫 [*]
- 鎌 田 賢
- 川 股 圭 之
- 小 西 俊 一
- 柴 田 敦
- 蛭 牟 田 繁
- 鷲 田 美 加
茨城放送出席者
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代表取締役社長
北 島 重 司
取締役編成担当
阿 部 重 典
編成チームリーダー
宮 田 浩 二
報道チームリーダー
畑 中 一 也
- 議題
- 『3.11あの瞬間を忘れない 未来につながることば、福島への思い』
2020年3月8日(日) 16:20~16:50放送
委員からの意見
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委員
IBS防災キャスターの樋口直実氏が中心に現地に出向いて県内各地の状況を継続してリスナーに伝えている番組だが、今回は「福島への思い」に焦点を当てて構成しており時宜にあった企画だった。
朝日新聞連載の「今伝えたい千人の声」取材記者の一人である益田暢子記者の話~「(茨城で)子どもが学校で友達が出来ている、地震がトラウマになっている」など戻れなくなっている心情が伝わった。
避難者支援団体「ふうあいねっと」代表の原口教授の実態報告や避難者の話「原発がなければ、ずっと向こうで生活をしていた。人災だ!」「茨城も原発身近な地域、過去のことにして忘れてはいけない!自分たちは全く癒えていない」など、現実の厳しさが理解できた。
水越レポーターが取材した、定住を決めた水戸市の美容室「ソエル」の小野田さん「浪江に戻りたいが我が子を連れてはもどれない」。つくば市の眼鏡店「グラングラス」の原田さん「こちらへ来て2年、山もあり田んぼもあり浪江と重なる点もある。お客さんとの繋がりを大事にしていきたい」という声は大変貴重、納得できる話だった。
茨城大学の調査では、福島に戻らないと答えた人が9割。意外に多いと感じた。それだけ目に見えない放射能の恐怖があるのでは。
古場さんの活動を通しての意見。自助グループで『しゃべり場』講演会や果物づくりなどをしている人の「引きこもっている方々、ご苦労をして苦しんでいる方々には民間の人間ではできないことがある。行政が手を差し伸べて入って欲しい」も傾聴に値する。
最後に樋口直実防災キャスターが、水越レポーターに語った言葉「二つの災害としてとらえなければならないと思う。地震、津波などの自然災害による被害は大きな問題だが、原発の被害は『終わらない、ずっと続いていく、生涯続いていく大問題だ』」が印象的だった。
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委員
茨城放送では東日本大震災に関連した様々な番組を制作し、「防災ステーション宣言」のスローガンのもとに情報発信や啓蒙活動に取り組んできた。ただ、その多くの番組は県内で被災された住民の震災当時やその後にスポットがあてられたものだった。今回のように他県(福島県)から避難してきた方々にスポットをあてた番組は少なかったと思う。
震災から9年が経った今日でも多くの方が県内に暮らし、長い年月が過ぎたにもかかわらず、未だに帰る目途すら絶たない現状に、あらためて事の重大さと罪深さとを実感した。番組内では、茨城大学の調査で「福島に戻るつもりはないとの回答が90%であった」という驚くべき調査結果にも触れられ、福島県をはじめ茨城県内に避難してきた福島の方々の震災がいまもまだ進行している印象を強く持った。
茨城放送には今後も様々な視点から震災を取り上げ、情報発信と啓蒙活動とに取り組んでほしい。
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委員
番組を通じて震災から9年が経過してもなお、避難者の1割に及ぶ4.7万人が未だ故郷を離れ、県内には東京に次ぐ3,200人が在住されていること。行政に携わる立場として、統計資料としては目にし、頭には入っているものの、復興道半ばであることを改めて痛感した。
今回の番組の中で、最も心に刺さった点は、「福島や茨城では、震災や原発事故の情報は共有できているが、東京での意識は薄れている。番組を通じた取材、放送は非常にありがたい」旨のコメント。全国紙や全国放送では、拾われにくい一般の生活者のコメントを取材、放送することが、茨城放送ならではの親近感を感じた。
さらに、朝日新聞紙面との連動された企画という点でも、地域メディアタイアップとして、非常に意義の高い企画であった。
県域民放テレビ局がない茨城県は、情報発信の脆弱性を指摘されるが、新たな情報発信手法として、是非、他の企画においても同様の企画を検討してほしい。
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委員
被災者本人ならではの言葉の重みを感じた。水戸市で美容室を営む小野田真仁さんの「自分が戻ろうって、もし思うんだったら、すごい年を取ってからという気がしますよね。子どもがちゃんと自立して、妻と2人で戻ったりとか。そういうのも全然アリかと思います」。被災直後からは家族が一緒になって困難を乗り越えてきたと思う。それが、大人の人生と子どもの人生は別々であり、かつ違う思いを抱えているのが「普通」だというふうに変わってきたことに9年の歳月を感じた。
また、つくば市の眼鏡店経営の原田功二さんの「(つくば市は)新しい街で、地元の商店街などもない地域だったので入りやすかった」という言葉に私は「(下町の)商店街」というと、勝手に「温かみ」「人情味」というイメージを抱いていたが、出来上がったコミュニティ-に新たに加わろうとすることは、精神的な負担になる人もいるのだと気づかされた。
一方、番組冒頭で茨城大の原口弥生教授の「福島に戻られた方も結構いらっしゃいますし、ここ2~3年でも茨城に移ってこられた方もいらっしゃる」という指摘があり、この二人は「いつから茨城に住んでいるのか」は知りたかった。原田さんに対しては、水越さんが「つくばに来て2年、そろそろ経つかなという……」と問いかけたので、「ああ、そうなんだ」と分かったが、最初に「いつ、茨城にいらっしゃったのですか」という質問があれば、二人の心情にすっと入っていけたと思う。「2011年に震災があって、その間は(どうしていたのか)?」という質問があったが、「どの間?」と疑問に思った。小野田さんの年齢が分かると、「すごい年を取ってから(浪江に)戻りたい」がより具体的に伝わったのでは。
また、小野田さんへのインタビューで、上記の印象的な言葉を引き出したが、そこに至るまでに「地元に戻ったりとは、そういうことは思ったりするんですか」「何年後にはこうなっていたい、いつか」、「そこまでは……」「どちらかっていうと、いまの生活を、っていう……」とたたみかけるように質問を続けていた姿勢には、少し冷や冷やした。そこで疑問に思った点は、ラジオの性質上、相手が言葉を探している時間の「沈黙の間(ま)」を、そのまま放送することはどうなのか? 新聞であれば「言葉を探していた」などと表現しているが、ラジオで「沈黙」はどのように取り扱っているのか教えてほしい。
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委員
番組冒頭で、キャスターの樋口さんから「・・・取材してみたいと思います」、レポーターの水越さんから「・・・お話を伺っていきたいと思います」との挨拶があった。時制が現在進行形であることによって、ライブ感が出て、リスナーを話にひきこむ効果があった。
福島県浜通りから避難して、茨城県で仕事・生活を再建し、茨城に根を張り出した事例として、水戸市で美容室を開業した方、つくば市で眼鏡・時計店を開業した方へのインタビューが紹介された。それまでの苦労を知ることはできなかったが、このような心の強い方々が茨城の地を選んでくれたことには、茨城県民として誇らしいと同時に有り難く感じた。
故郷への想いを共有する方々が、自助グループでの交流会などを通じて気持ちを支え合いながら踏ん張っていることがわかった。そのような方々に接する機会があれば、役に立ちたいという気持ちになった。
他方、キャリアを積み重ねてきた仕事を避難先で活かせない場合や仕事がみつかっていない方もいる、引きこもっている方もいるという状況が紹介され、改めて原発事故の影響の大きさを知ることができた。組織的に共助につとめている方のインタビューの中で、民間組織だけでは限界があるので行政による支援が望まれるという発言には説得力があった。
インタビューや解説の中では、地震・津波の被害と原発事故の被害が常に区別して語られていた。長期化する原発事故の影響は特別に深刻であることが浮き彫りになった。しかしながら、まとめでは、災害への備えについても考えていく必要があるとして、焦点がぼかされたような印象になった。
原発事故の教訓を忘れずに防災に生かしていくことは大切。そのためには、専門家による安全性の継続的な向上とともに、電気エネルギーを必要としている社会の改善も必要だと思う。今後、社会を構成する個人がとるべき行動を考える機会があるとよいと思った。
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委員
東日本大震災の周年特集番組は、大地震や原発事故に対する関心の低下を防ぎ、災害への備えを訴えるため重要な役割を果たすと考える。「3・11あの瞬間を忘れない~未来につながることば、福島への思い」のテーマで制作された番組は、福島からの避難者の支援団体関係者、避難者を取材した新聞記者、実際の避難者らのインタビューで構成され、それぞれの立場の生の声を聞くことができ、大変興味を持った。
多くの関係者に精力的に取材を重ねた意欲的な取り組みに敬意を表したい。ただ、取材対象者を広くしたためなのか、全体にやや散漫な感じを受けた。
番組には震災前とは違った場所を生活の拠点としている避難者が登場し、時間の経過とともに福島との関わりが薄くなっていくことを感じさせるような発言もあった。「福島への思い」「災害の傷」といったキーワードにこだわる番組の趣旨は十分理解できるが、一方で故郷に対する考え方の変化にもう少しスポットを当てるような視点があってもよかったのではないか。
聴取者への訴求力が高いのは、何と言っても「生の声」。そういう意味で、30分という短い時間の番組の中で、実際に放送するインタビューは、避難者だけに絞る手法もあったのではないか。
9年の歳月が経過し、インタビューをつなぐだけでなく、震災発生直後の緊迫した状況を伝えた茨城放送の音源をあらためて活用するなど、当時を思い起こしてもらうことで、聴取者の関心をより高めるような工夫があってもいいのではないか。
出演者が「防災キャスター」「防災レポーター」という肩書を使っていますが、通常の番組の「キャスター」「レポーター」と何が違い、どう使い分けをしているのか知りたかった。
今年は新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、「3・11」を迎えた。「目に見えない未知のウイルス」との闘いに苦悩する人々の姿は、9年前の「目に見えず、においもない放射能」に翻弄された福島県民の姿と重なる部分があるのでは。今後は、そんな角度からのアプローチも期待する。
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委員
この番組は、「防災ステーション宣言」の茨城放送ならではの取り組みとして注目している。人々の意識が薄れ、メディアで震災が取り上げられる機会が年々減っていく中、継続して番組を制作し、放送していることは大変重要だと思う。
「3.11あの瞬間(とき)を忘れない」のタイトルを見て、樋口直実さんの声が耳に浮かんだ。「継続は力なり」と改めて思った。水越恭子さんとのコンビもメリハリがあって良かった。
震災から9年、4万人以上が未だ避難先での暮らしを続けていると語られ、茨城県は東京都についで避難者が多く、3200人程度いると知り驚いた。県内でもこの現状を意識している人は少ないのではないか。
福島県から避難している方と支援している方、双方の視点から「震災後」が語られ、現状を立体的に捉えられた。福島県浪江町から水戸市に自主避難し美容室を営む小野田さんが、「第一に家族を思って避難を決めた。考えないようにしようと思う時もあるけれど、浪江のことは常に頭に入っている」との語りから、震災や原発事故が残した心の傷の深さをうかがい知った。
朝日新聞の記者の取材では、避難者が抱える悩み、地元に戻りたくても人間関係がなくなり戻れない方がいる。子供にとって避難先で9年間も暮らし、これからもそこで住みたい思いが強いという現状がよくわかった。子供たちにとっても、地震がトラウマになっていることもわかった。
被災者の年齢も上がり、途切れた就業形態を取り戻す難しさ、心身面の健康を崩されている方も多いという原口教授の話から問題の奥深さを感じた。「福島の問題は終わらない」という樋口キャスターの言葉に自分の危機感を覚えた。
避難者同士の交流会の実施など、震災から9年経っても活動を継続している団体・個人の活動があることは頼もしく、今後も継続して紹介してほしい。
2020年05月31日
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