チームを組み在宅医療提供 つくばに診療所 医師の負担軽減 デジタル活用も

「自宅で最期を迎えたい」とニーズが高まりつつある在宅医療ですが、医師が看護師などと複数のチームを組んで在宅医療に当たる診療所が、つくば市に開所しました。24時間365日の在宅医療は、精神的な緊張など、医師1人の負担が大きいため、常勤・非常勤の医師を集約し、デジタル技術の最新システムで業務を効率化しました。

開所したのは在宅療養支援診療所「あいつくばクリニック」で、つくば市のほか、稲敷市、石岡市など半径16キロ圏内で訪問診療を提供します。全国展開を進めている、群馬県太田市の医療法人「あい友会」が運営します。国の調査で、20歳以上の人が最期を迎える場に希望したのは「自宅」が最多の69・2％となっています。

院長には徳洲会古河総合病院院長だった、福江眞隆さんを迎えました。

訪問診療に休みはありません。そこで、あい友会は独自のシステムで、5人の医師が750人の患者を担当する体制で患者をサポートし、さらにデジタル技術の活用も進めています。訪問診療チームが素早く対応するよう、位置情報や診療時間などをモニターで把握できるのが特徴です。このほか、従来は病院での閲覧が一般的だった電子カルテを専用端末で共有し、セキュリティーに配慮しつつ各職員が持ち歩けるようにするなど、独自モデルを運用します。

医師が慢性的に不足し、開業医の高齢化が進む地方では珍しい取り組みです。

運営するのは群馬県太田市の医療法人「あい友会」です。2014年、太田市に診療所を開いたのが始まりで、ここまで、山形県や神奈川県、長野県に拠点を設けてきました。法人理事長の外科医・野末睦さんにインタビューしました。

■ 「自宅で最期を迎えたい」ニーズ高まる在宅医療の今　野末睦さん（医療法人「あい友会」理事長）

―「今後、死に場所難民が出るのではないか」との指摘がある。

国全体の方針として進む、日常診療の中での在宅看取りの選択肢という流れに沿った動きの中で、日本人の死生観がもうだいぶ変わってきているのではないかと思っている。最後まで 人間の尊厳を保った生き方をしたいと考える人が増えてきて、それが今、だんだん主流になってきている。施設での看取りも含め、人間の尊厳を保ちながら旅立つことにすごく配慮することを包括的に考えて進めていくのは、日本人の価値観にかなり準じ、大事なことじゃないかなと思う。

－多死社会を見据えた最期の迎え方について、多くの人は、病院なのか施設なのか在宅なのか、まだまだ戸惑いを持っている。

急性期病院では早めに対応を促されるので、在宅医療の受け皿を作っておくのは大切。病院の「多機能分化」が進んでる状態。 私たちのグループとしては1つのクリニックで ある程度十分な数の医師と職員も確保し、最低5人ぐらいの常勤医師を確保して24時間365日在宅の患者に対応する。医師が増えれば、質も高くすることができる。今から15年ぐらい前に病院で亡くなる人は80%だったが、いろんな施策や 受け皿の充実によって 66%にが下がってきた。個人宅と施設を合わせる、これを自宅と呼ぶならば、近い将来 50%超えてくるのではないか。核家族化が進む中、私たちもできる範囲でそれをサポートしたいが、独居での看取りが難しいのは事実。家族の説得とかあっても、自宅での看取りを希望する場合はそれを大事に可能な限り実現することが大切。

－現場で普段感じていることについて。

ご家族の負担に応えることができるのだけのマンパワーが在宅医療にあれば、自宅でなくなるっていうのは本当に、今あるべき姿ではないか。無理なケースであれば、すごく質の良い施設を作って、そこで看取る人の割合を増やしていく方向に進まざるを得ないと思っている。

－選択肢を広げることも課題になりそうか。

まだまだ住民の方々が在宅医療というものを比較的気楽に使え、使ったら結構、便利なものだということを認識してないのが現状ではないか。新しい拠点を開くたびに感じる。つくばはだいぶ進んでいる地域だが、サービスがあるんだっていうのを知って、びっくりされる方も結構多い。

－全国展開について。

例えば 3年間で30カ所とかという数字はあるが、一応ビジネスで成り立つぐらいの人口の場所で展開をし、同じような価値観とミッションを共有しながら広めていけるようなところで広げるのを大原則にしている。いろんな施設の経営者の方々にもあいつくばクリニックの存在を知っていただき、質の高いものを提供してもらえるかどうか試してみたいと思ってもらえれば嬉しい。

（このインタビューは、2024年5月20日のほっとボイス「人物インタビュー『この人に会いたい！』」、 2024年7月13日の「週刊ニュースポ！『ニュースなニューズ深掘り』」で放送しました）