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2023年01月17日(火曜日)

「ニュースなニューズ」《現状をもっと知ってほしい!大学生の学生生活》コロナによる学生の暮らしへの影響を調査 茨大のゼミ生

ニュースなニューズ。

新型コロナウイルス感染症が収束の兆しを見せないなか、茨城大学では講義がオンラインからリアルへ戻り、学内への立ち入りや課外活動の制限もなくなりましたが、物価高による食料品などの相次ぐ値上げで生活に困窮する学生が多くなっているようです。学生団体「学びと交流の秘密基地」調査プロジェクトに参加して、新型コロナウイルスによる学生の暮らしへの影響調査を行った、茨城大学人文社会科学部4年で、労働経済論を学んでいる森大起さんと星龍汰さんに学生生活の現状などを聴きました。

 

 

写真 = 学生団体「学びと交流の秘密基地」調査プロジェクトに参加して、新型コロナウイルスによる学生の暮らしへの影響調査を行った、茨城大学人文社会科学部4年で、労働経済論を学んでいる森大起さんと星龍汰さん(右から)

 

(この3年間の学生の暮らしの困窮ぶりは社会や周囲にここまでしっかりと伝わってきたのか)森さん  コロナが感染拡大し始めた初期の頃は伝わっていたと思います。当時は緊急事態宣言などの影響によって学生がアルバイトに入れずに休学や退学にまで追い込まれるといった状況が報じられていて伝わっていたからだと思います。そもそも、アルバイトをしないと通常の学生生活が送れないこと自体が問題。

(厳しい経済状況にあるというところはまだ取りきれていないと思われるが、家庭が支えきれない学生さんの割合は全体でどのくらいになるのか)森さん 私は部活に所属しているが、部活の中ではだいたい半々ぐらい。家庭からの収入で生活を成り立たせて自分のアルバイト収入は自分のお金に使っていると言った学生がいれば、仕送りが少ないから自分の生活を維持するためにアルバイトをしているって言ってた学生もいる。

(家庭が支えきれてる学生よりも、アルバイトをしたりとか奨学金のような就学支援で何とか乗り切ってる方の方が圧倒的に多い感じはあるのか)森さん 調査をした段階でアルバイトをしていると回答した学生は6割以上に。アルバイトが学業の面でマイナスに影響が出ていると回答した学生は3割ほどに上っていたので、アルバイトをしないと暮らしが守れない学生は3割ほど。

(学生の皆さんの暮らしが一気に苦しくなった状況が今も同じような苦しみとして続いていて、更に一層苦しくなってるのか)森さん 苦しい状況が今も続いているという状況。感染拡大当初は一時的な経済支援などが充実していたのでそれでなんとか成り立っていた。ただ今は、アルバイトができるようになり、経済支援がどんどんなくなって、アルバイトをして楽になるのかというと、そうではない状況になっていると思う。

(物価高騰の問題が苦しい状況に拍車をかけてるということもいえそうか)森さん 光熱費を払うために食事を制限したりといったところも意見としてあがっていたのでそういったところも影響は大きい。

(学生生活調査2021の概要について)森さん 685人から回答を得ることができ、主に経済状況であったりとか食生活だったりとか。授業やサークル活動に対する意見などが様々寄せられた。

(この団体としても何か取り組んできたことがあったのか)森さん 学びと交流の秘密基地という団体では学習支援などの活動を行っている。小中学生を対象にして貧困の連鎖を断ち切るといった大きな目標の中で夏休みや冬休みなどの時間に1つ場所を借りて中学生に勉強を教えるといった活動。

(調査からどんなことが分かってどんな課題が浮かび上がってきたのか)森さん 大きく2つの事が浮かび上がったと思う。1つ目は経済状況の厳しいところ。交流が減少し、孤立化してしまうといった状況が分かった。

(政策的にどんなことが足りないか)森さん 普遍的な支援というところが足りないと感じている。貧困世帯と言われるような世帯にも支援が充実しているけれども、今アルバイトを頑張っているからかろうじて成り立っていると言った学生も多くいる。学生がアルバイトに行って学業に影響が出ているだったりとかそういったところも調査の意見として上がっていたので、そういった支援も充実させるべきなのではないかなと考えている。

(政策的にどんなことが足りないと感じたか)星さん 継続的な支援が足りないと感じた。ウィズコロナというワードを耳にする機会も多くなってきたが、学生は個人によって差はあっても、多かれ少なかれコロナの影響を受け続けている。コロナが続く限りは、学生の支援を継続的に実施して欲しい。

(授業の質について感じていること)森さん コロナが流行し始めた当初はオンラインがほぼ10割を占めていた状況だった。ディスカッションでやってるとか学生同士で協力しながら授業に臨んでいるといった姿勢がなかなか難しいといった状況があって、対面と比較すると質が落ちたのかなと感じている。

星さん 個人的に対面形式の授業の方が好きなので、オンライン授業となったことによって正直、授業の質は落ちた。対面授業からオンライン授業になったのに学費が変わらないのでちょっと不満を抱いてるというような声が多く寄せられた。今後、大学も学生の要望を取り入れながら質の高い授業を展開していって欲しい。

 

 

 

大学の進学が家計の大きな負担となっている背景の1つに、大学の授業料が上がり続けている実情があります。例えば、私立大学の年間授業料の平均は、この30年間で1.5倍に増えています。国は2020年度から、所得の低い世帯に対して支援制度を広げています。しかし、いわゆる“中流”の層で、この支援制度に当てはまらない家庭にも、子どもの大学進学による負担が、重くのしかかっていることがみえてきました。勤続年数によって収入が上がる「年功賃金」や、安定した収入や雇用が確保されていた「終身雇用」の時代が揺らぐなか、コロナ禍でアルバイト収入が低迷するなどの要因が重なり、経済的な苦境が続いている大学生の暮らしの現状などについて、2人を指導した、労働経済学が専門で茨城大学人文社会科学部の清山玲教授に聴きました。

 

(2年前に国の緊急給付金制度っていうのがあって、大学によって対応にばらつきがあったということがあったり、所定の予算をはるかに超えてしまったという話があると思うが、至急の対応が大学の中でどう求められているか)一般的に現状、困ってる学生たちへの支援ということで言えば、一番厳しいのは授業料は完全免除になり、給付型奨学金を受けられるということで、以前より少しの遅延があっても手厚くなったとは思うが、大学生の子供に仕送りをする余裕っていうのがない。住宅ローンなども抱えた中での対応なので厳しいという状況がが少なくない。学生が自力で奨学金を借り、返済が必要な奨学金を借り、アルバイト。場合によっては、授業料すらも自分でまかなっているという子ども達がいる。そうすると、親の所得基準で外れてしまっていて、「自分はこんなに苦しい」といえず、誰か何とかしてくれないかと思ってる子ども達がいるんだけれども、それを救う仕組みがなかなかない。子ども達から出てくる声は、「ひとり親の家庭に対する支援メニューはあるし、非課税の世帯であるとか、経済的に厳しい家庭に対する支援もあるけれど、なぜ、教育ローンをたくさん借り、アルバイトも困難になって苦しんでるのに助けてもらえないんだろうか」っていう声は多いし、厳しいのに親から支援を受けてない子どもも少なくない。

(緊急経済支援を受けたことがある学生の満足度は高い一方、申請を却下された学生は不満を抱いているという結果は、去年の学生生活調査でも出てきているが、この件について最近感じてることや、見聞きしている話について)基準がもっと緩めの、必要な子どもたちが給付で奨学金を受けられるようになることが前提であるべきではないか。日本の奨学金は奨学金という名目の貸与が有利子であるものが少なくない。そう考えると、これはもう、借金を背負ってということと同じなので、学生からすると、安心してお金を借りて学ぶっていうふうになりにくい。返すことが前提なので、こんなに借りていいのかしら、となってしまう奨学金の返済を将来の収入に連動した形で返済させるって言うような仕組みであるとかも必要になってきているし、給付の奨学金の枠をとにかく広げるっていうこと、授業料を安くするってことが必要。こうした時代背景、厳しい経済状況を皆さんが受け入れる中で、若者1人1人には、受ける心理的なストレスもあり、学生たちは基本的に学生生活を自分たちできちんとやっていかなければならないと。お金も、サークルも、その他の学び課題、活動なんかをうまくやれて当たり前でうまくやれないのは自分の責任であるというふうに思ってる。でも、そういう活動に参加するのは、自分の力を上げていくっていうためにあるし、その人間関係を、社会生活を十分に送れるように取り組むとすれば、やっぱり支援が必要。コロナの中でお金もないしその人と繋がることも制限されてしまうっていうことだと、学生同士で助け合うこともできない。人間関係が希薄になると、孤立感を強め、「寂しい」っていう調査結果も出てくる。特に1人暮らしの学生は、地元の親元から離れて初めて一人暮らしをするのに、友達もいないところにポンと茨城県に来ました、っていう子どもたちは、アルバイトもできないし、授業も大変じゃないだろうか。今、コロナが終わって少しあの元に戻ってきたが、アフターコロナで何が問題かと言ったら、経済的理由でアルバイトをしてる子って少なくない。アルバイトの日数も週3日以上っていう子どもたちが結構いる。アルバイトが学業に支障をきたしてると思っていて、できれば減らしたいなと思ってる。そんな学生たちがいる。こういう子どもたちを減らしたい。減らすことができれば、サークル活動にも参加できる、学生たちが余裕をもって大学生活を送れる、そして、余裕を持って暮らしを送るって事は学ぶ時間と機会が確保できるっていうこと。そうできるような支援が必要なんじゃないか。ギリギリのところの子どもだけを支援するっていうのだと、学生たちがその時間とお金の板挟みにあってしまって、精神的にもゆとりがないって状況に追い込まれるんじゃないかなと思って心配しています。

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