「食」プロジェクト

2022年12月19日(月曜日)

JAと茨大の就農体験学修プログラム 大学生と生産者 汗を流す

高齢生産者の離農や担い手不足が懸念される「農業」を支えるため、茨城大学農学部とJAグループ茨城が新たな、就農体験学修のためのプログラムを進めています。

就農体験学修のためのプログラムは今年からスタートしていて、10月20日、土浦市にある農場では、茨城大学農学部の学生が、生産者とともに、農作業に汗を流しました。この日の作業は、さつまいものつる草を刈り取る農場の環境整備で、畝に沿ってクワを入れていました。

 

 

プログラムでは、生産者と学生の双方に利点があるケースの構築を探っていて、農業を応援してくれる人材を増やしたいと考えています。

茨城県は北海道、鹿児島県に次ぐ全国3位の農業産出額を誇り、「首都圏の台所」とも言われていますが、農村の環境は厳しさを増しています。

JAは求人ウェブサイトや農業アルバイトマッチングサービス「農 HOW」を活用し、大学や短大、専門学校などに働き掛けて、農業を応援してくれる人材を増やそうという取り組みを進め、就農者も出てきましたが、農業生産の全体は依然、実習生の労働力に頼っています。燃料費や資材費の高騰とともに、人手不足への危機感は止まりません。

 

 

学生が企業で就業体験するインターンシップが普及していますが、茨城大学では「インターンシップ・オフ―キャンパス・プログラム(iOP)」と名づけた取り組みが進んでいます。企業へのインターンにこだわらず、海外での研修、地域活動など、大学の「外」での経験を積ませるプログラムです。何をやるかは学生自身が決めて計画を立て、報告書を出します。内容次第で単位を取得できるということです。このなかでは、農業に従事するインターンで単位を取得するメニューの拡充も進めています。学生に農業経営や農作業についての実践的な知見を身につける機会を提供するとともに、農家の人手不足を解決します。農業で主体的に学べるユニークなプログラムづくりとは。茨城大学農学部の宮口右二教授に聴きました。

Q:大学全体でiop制度というのが進んでいて、今回農業をメニューに入れているが、農業へのメニュー拡充を通して目指すところとは。

A:今回は、iopという茨城大学のプログラムを使って学生さんに農業体験をさせるのが趣旨だが、だからといって農学部で全くやってないかというと農業実習そのものはやっている。非常に限られた時間内で行っていて、農業は連続して長い時間作業をやるので、そういったことを現場の農家さんに教えて頂きながら体験していただくという趣旨。

Q:農家にとっては人手不足で、学生にとってはその具体的な学び、実際の現場との乖離が全くないわけではないかと思うが、これまでの流れをどう感じているのか。

A:学生は大学の中で実験とか講義をやったり。農業に関する科学的な知識は持っている。ただ、それがどう現場に行かされてるかが全然わからない。机の上で学んだことが現場で「あ、そういうことなんだな」と深く理解を深めてほしいなとは思っている。

Q:先生からご覧になって何が一番乖離してるのか。

A:日本人というか、一般の消費者にとって食べ物は袋に入っていて、電子レンジでチンすれば食べられるという風に思ってるかもしれない。実際、その前に食品加工のメーカーがモノをつくるが、そもそもは農家が作り、農家は土を耕したりとか肥料をまいたりとか、一通りの流れを進めるが、今の学生は何か乖離していて、わかっていないんじゃないか。食料、食べ物の原点をみてもらいたいというプログラム。

Q:これまでの授業のスタイルと全く違って、自分で考えなければいけない裁量も増えてくる。教員が全くその手足とならない時間が一気に増えると言うことになる。これまでの授業と、アプリを導入して実際に自分で考えて取り組むプログラムと比較して、自分で結論を決めていくというプロセスが長くなるということにはどんな効果が期待できるのか。

A:大学で学ぶのは結局、自分で考える力を身につけなければいけない。より外部のJA、農家と協力することで、考える力がもっともっと伸びるんじゃないか。ある程度こちらが突き放した形にはなるが、それによって「やっぱり自分で考えなきゃ」とそういうことを積極的に思うようになるんじゃないかと思う。

Q:答えがはっきり見えていないと学生が不安になってしまって、そのことが学びになるのか。

A:学生に農家になって欲しいというつもりでプログラムを立ち上げたわけでない。「食」「農業」の現場を見て自分の将来像を考えて欲しい。経験をしながら、農業生産に関わる職業に就きたいとか、食料の原料などを取り扱う商社のような法人に勤めたいとか、農業を使ってJA、自治体、茨城県庁。勤めたいとなれば色々な学生の見方がある。学生が集まることで多種多様な考え方で共有してほしい。そういう場がないと、人が何を考えているのかわからないのではないかと思う。いろいろ話し合うという点でも同じ作業をすることで効果的なことが生まれてくる。

Q:中長期的にどのように成長させていきたいと先生はお考えになっていらっしゃいますか。

A:プログラムは今年から始めたが、最終的には、全農学部の学生が必ずどこかの学年で体験して、そして具体的な単位に増していく。そして学びと繋げていきたい。

Q:大学の個性をどう打ち出して行くのか、メリットがどのように大きく感じられるか、合わせて伺っていきたい。

A:農業だから農学部というイメージがあると思うが、農業は結局そこに住んでる地域の方に向けたものであり、食を通じて健康とか食育といった側面もあるし、食料の生産といったことを考えると機械化の問題とかがある。茨城大学の学部構成を考えると、全ての学部の学生さんが何らかのテーマにひっかかってくんじゃないかと思う。広げられたら面白くなる。

Q:JA以外の様々な農業関連団体、農業法人と連携の選択肢も今回、モデルケースがきっかけに増えてくると言った、目指すものがあれば合わせて伺います。

A:もう農学部の卒業生の中には実際に農業法人を立ち上げて経営されてる方もおられます。今回は自治体があまり絡んで来なかったんですけども、自治体、茨城県含めてその茨城県の農業っていうものをもっと盛り上げるために、農学部の学生さんがもっといろんな場面で参加できるようなそういう仕掛けを考えたいと思っています。

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