「食」プロジェクト

2022年12月21日(水曜日)

有機肥料で土づくりを 水戸市でセミナー 

農薬などに頼らない「有機農業」を広めようという、有機資材活用促進セミナーが、水戸市で開かれました。家畜の「堆肥」や、植物を土にすきこんで肥料にする「緑肥」などの「有機資材」を活用し、農薬を減らすことを提案しようと、JA水戸が開きました。政府が物価高騰対策の一環として、化学肥料の使用量を減らした生産者に肥料価格の一部を支援する仕組みを導入する方針が打ち出されるなか、セミナーの会場には生産者など100人近くが詰めかけました。

 

 

あいさつする、JA茨城県中央会の八木岡努会長は「オーガニックであったり有機栽培。今日のようなセミナーで紹介する課題はなかなか誰かが種まきをしてきちんと育てていかない、増えていかない。有機農畜産物の生産の最先端の鍵を目指せる茨城県を目指し、共に考えていく機会にして参りたい」と話しました。

つくば市にある農研機構中日本農業研究センターで、化学肥料に代わって「緑肥」を利用した土づくりなどを研究する唐澤敏彦氏が講演し、「緑肥」には、根が下層に伸びて水はけを良くし、線虫や病害、雑草の抑制に効果があると紹介しました。

 

 

ウクライナ情勢などを受けた肥料価格の高騰の生産者の経営への影響を緩和しようと、国が価格上昇分の7割を補てんする
事業が進む中、参加した生産者らは「自分たちでも色々取り組めるようなことが多々あるかな」「いろんな試験の結果などから違いとかも分かってきたのでよかった」などと話していました。

JAは生産者のコストの低減を目指すことを含め、セミナーを継続して開催する考えです。

さらに、有機農業を実践する生産者で、つくば市に住む、いばらき有機農業技術研究会会長の松岡尚孝さんが虫をよせつけずにどれだけの野菜を収穫できたのか、その成果を紹介しました。講演後、松岡さんに話を聴きました。

 

 

Q:茨城農業の現状というところから伺いたいんですけれどもその化学肥料とかその化学農薬に依存しているという状況があるのか。

A:ずっと茨城は、全国2位とか3位と言われている農業県だが、有機農業の割合が今0.48%と言われているので本当にまだまだ低い状態。なかなか、有機農業が元気にならない。僕はつくばにいるが、芝生の畑が多く、農薬のサンプルが多いということがあって、中にミツバチがいなくなったりしている。そういった意味で、まずは農薬を減らしていくことが大事。

Q:化学肥料を使えば、一時的には収量も増えると聞いてるが、実際そうなのか。

A:植物にとっては、安い費用で作っていくことができるので、一気に大きくなったり、早く収穫したりできるようになっている。それが今の化学肥料の利点。逆に言えば、収量が増えれば農薬が必要になってくる条件が重なってきた。

Q:保全型や循環型という時代がますます進化をして行こうとしているが。

A:農業の始まりが環境保護の出発になり、そこをきちんとやって、結果的に安全で安心になるっていうところがあって、美味しいということがきちんと維持出来ればよい。

Q:国が肥料の高騰対策として、緑肥の活用で化学肥料の2割を軽減した生産者にコスト上昇分の7割を補填する方針を打ち出して状況があると思うが、そうした中で、コスト、技術面などの課題は今、どうなってるんのか。

A:技術が発達し、利用できるようになっているので、もうあとはやるかやらないかという問題。

Q:在来野菜は農薬はほとんど使わずに作れるようになっているのか。

A:農薬はほとんど使わないので、この後はいかに健康な野菜を作るか、健康な土作りをするかというところに来ている。

Q:農薬を使うために何をするかということで、いったん農薬を使ってしまうと、地の力を回復するのに時間がかかるということもよく伺う。どんな生産者の方にも有効な方法はあるのか。

A:循環型に取り組んでいるが、もう病気とは違うのが当たり前。土壌の検査、診断で土壌の健康状態を良くなるように、そして、どう対処するかっていうことがあれば、長い時間をかけずに転換できると思っている。

Q:松岡さんは有機農業の先進事例をご紹介をされたが、新しい技術の指導、普及体制について、現場でどう実践しているのか。

A:時に指導はしているが、まだ不足している。有機農業をちゃんと教えるところを作っていくことはまだできていません。農協自体がそういう勉強ができることをやってくとか、セミナーも一つの出発かなと思う。

Q:将来展望について。

A:僕は楽観主義だが、肥料がもうほぼ手に入りにくくなってくる状況の中、食糧不足が訪れ、日本も争奪戦に入っているように思う。その中でどう食料自給をしていくのか、明日のことが一番今大事かなと。

Q:有機農業が社会全体にどう波及し、産業振興みたいな所に繋がるのか。

A:有機農業に限らず、肥料の形態が変わっていくと思う。一般の農業もほとんど化学肥料を使わない時代になって、有機農業でもっと使いやすいものになったりとか。イノベーションが期待されたりとか。栽培ではすでに大量に何トンというレベルで有機物を入れるくらい、農業全体が有機農業に向かってます。

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